アスベスト除去方法について徹底解説!安全な環境づくりのために知っておきたい基本知識
アスベストとは?その危険性と背景を知る
アスベストは、かつて建築資材として広く使用されていました。耐火性や断熱性に優れ、安価で手に入ることから、1970年代以前の建物に多く使用されています。しかし、アスベストは繊維が非常に細かく、飛散した粉じんを吸い込むと健康に深刻な影響を及ぼすことが分かりました。
健康被害
WHO(世界保健機関)の報告によると、アスベストを吸い込むことで以下のような病気を引き起こす可能性があります。
アスベストの健康被害は、吸引してから症状が現れるまでに数十年かかることが多く、潜伏期間が長いのが特徴です。そのため、現在でも過去にアスベストを吸い込んだことによる被害が報告されています。
アスベスト除去の重要性とその方法
アスベスト除去は、適切な手順で安全に行わなければなりません。建材に含まれるアスベストの状態や飛散性に応じて、除去方法が異なります。
アスベストのレベル分け
アスベストの飛散性によって、次の3段階に分類されます。
レベル1(最も危険)
発じん性が非常に高い「石綿含有吹付け材」が対象。見た目は綿状で、取り扱いが特に難しい。
レベル2(危険性が高い)
石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが対象。密度が低く、崩れると飛散するリスクが高い。
レベル3(比較的安全)
アスベストを含む建材が対象。飛散性は低いものの、破損時には注意が必要。
除去工法の種類
アスベスト除去には、主に以下の方法が用いられます。
①除去工法
アスベスト含有層を完全に取り除く方法です。下地からアスベストを取り除くため、解体後の再発リスクがなく、最も安全です。
②封じ込め工法
アスベストの上から溶剤を吹きかけ、外部に飛散しないよう封じ込める方法です。取り残しが生じるため、解体時には再度除去が必要です。
③囲い込み工法
板材などを使ってアスベストを密封する方法です。建材内部のアスベストをそのまま残す形になるため、将来的なリスクが伴います。
④剥離工法
薬品でアスベスト含有層をやわらかくし、取り除く方法です。湿潤化により飛散防止が可能で、特にレベル3に適しています。
⑤超高圧水工法
高圧水でアスベストを含む塗材を取り除く方法です。環境への影響が少ないため、主にレベル2で使用されます。
安全管理ポリシー:アスベスト除去で大切なポイント
アスベスト除去作業は非常に危険を伴うため、徹底した安全管理が求められます。アスベストの粉じんが飛散すると、健康被害を引き起こすリスクが高まるため、事故や感染を防ぐための厳格な対策が必要です。以下に、安全管理ポリシーの各ポイントを詳細に解説します。
1. 事前調査
アスベスト除去作業を行う前には、必ず事前調査が必要です。これにより、建物にアスベストが含まれているか、またその状態(飛散しやすいか、密封されているかなど)を把握します。この調査は、建物の構造や使用されている建材によって異なる場合があるため、専門の調査員によって行われます。
事前調査の具体的な流れ:
- アスベストの検出:壁材や天井、床材、配管の断熱材などを検査します。顕微鏡や専用の分析機器を用いて、アスベストの繊維が含まれているかどうかを確認します。
- 検査報告書の作成:調査後、アスベストの有無やその種類、使用されている場所に関する報告書が作成されます。この情報に基づいて、どのような除去方法を採用するかが決まります。
2. 法令に基づく届け出
アスベスト除去作業を実施する場合、法的な届け出が必要です。特に、アスベストを含む建材が一定量を超えている場合は、作業前に自治体に届け出を行わなければなりません。この届け出は、作業中や作業後の安全を確保するための重要な手続きです。
必要な届け出:
- 作業計画の提出:除去方法や作業内容を明確にした計画書を提出します。
- 作業開始前の通知:アスベスト除去作業が開始される前に、作業開始の通知を関係機関に提出する必要があります。
3. 防じん対策
アスベストを取り扱う際に最も重要なのは、粉じんが飛散しないようにすることです。飛散したアスベストの粉じんを吸い込むことが、健康被害の原因となります。そのため、作業エリアの封じ込め、湿潤化、空気清浄機の設置などの対策が必須です。
防じん対策の具体例:
- 作業エリアの密閉:作業を行う場所は、密閉したスペースにして他のエリアへの粉じんの拡散を防ぎます。窓や扉を封じて、空気の流れを遮断します。
- 湿潤化処理:アスベストが飛び散らないように、作業中は建材を湿らせる(湿潤化する)ことが求められます。水や専用の化学溶液を使用して、粉じんの飛散を防ぎます。
- 空気清浄装置:作業現場には、専用の高性能フィルターを備えた空気清浄機(HEPAフィルター)を設置し、空気中のアスベスト繊維を捕らえます。
4. 専門資格を持つ作業員
アスベスト除去作業は高度な技術を要し、適切な訓練を受けた作業員が行う必要があります。作業員には、アスベストに関する専門資格が必要です。これにより、作業員が安全に作業を行い、適切な手順で除去が行われることが保証されます。
主な資格:
- アスベスト作業主任者:アスベスト除去作業の責任者として、作業の安全を監督します。作業員の健康管理や作業計画の確認、作業環境のチェックを行います。
- 特定建築物石綿含有建材調査者:建材に含まれるアスベストを調査する専門資格です。事前調査で必要となります。
5. 健康診断
アスベスト除去作業に従事する作業員には、定期的な健康診断が義務づけられています。これにより、作業員がアスベストによる健康被害を受けるリスクを最小限に抑えることができます。また、作業後のフォローアップも重要です。
健康診断の内容:
- 定期的な健康チェック:アスベストにさらされることで、肺がんや中皮腫、じん肺などの病気が発症する可能性があるため、胸部X線検査や呼吸機能検査などを定期的に受けることが求められます。
- 作業後の健康管理:作業後にも健康診断が行われ、アスベストによる影響がないか確認します。
6. 廃棄物処理と管理
除去したアスベストを適切に処理することも重要な安全管理の一環です。アスベストは「特別管理産業廃棄物」として取り扱う必要があり、適切な方法で廃棄しなければなりません。
廃棄物処理の流れ:
- 二重梱包と表示:アスベストを含む廃棄物は、耐水性の袋で二重に梱包し、適切な表示を行います。
- 収集と運搬:廃棄物を運搬する際は、許可を受けた運搬業者に依頼し、適切な処理場へ運搬します。
- 最終処分:アスベスト廃棄物は、法的に定められた処理業者によって、最終的に適切に処分されます。
7. 作業記録の保存
作業記録は、万が一の事故やトラブルに備えて、詳細に記録し、一定期間保存することが義務付けられています。作業内容や使用した機材、作業員の健康状態、廃棄物の処理状況などを記録し、後から確認できるようにしておくことが重要です。
作業記録に含まれるべき情報:
- 作業日誌:作業が行われた日、作業内容、作業員の状況を詳細に記録します。
- 廃棄物管理記録:廃棄物の梱包、運搬、処分の手順とその証明書を保存します。
以上のように、アスベスト除去作業における安全管理ポリシーは非常に詳細かつ厳格なものです。これらのポリシーに従うことで、作業員や周辺住民の安全を守り、アスベストによる健康被害を防ぐことができます。
アスベスト除去業者が選ばれる理由
専門業者に依頼することで、次のようなメリットがあります。
1. 法令遵守
厳格な規制に基づいて作業を行うため、トラブルを未然に防ぐことができます。
2. 確実な飛散防止対策
専用機材や技術を使用して、安全に作業を進めます。
3. 廃棄物処理の安心感
特別管理産業廃棄物として適切に処理されるため、環境への影響を最小限に抑えられます。