取り壊しと解体の違いは?壊す方法から注意点まで
「解体」と「取り壊し」はイコール?それとも別物?
まずは、辞書での意味を確認してみましょう。
- 解体:組み立ててあるものをバラバラにすること。また、バラバラになること。
- 取り壊し:建物などを壊すこと。
「解体」は物を分解する行為全般を指し、建物だけでなく生物や機械などさまざまな対象に用いられる言葉です。一方、「取り壊し」は建物を対象にした「壊す」という行為そのものを表します。つまり、「解体」は目的に応じて計画的に分解するニュアンスがあり、「取り壊し」には単純に壊す行為を指す意味合いが強いといえます。
「解体」と「取り壊し」の違い
違いを一言で表すと、「解体」には目的や方法の選択が含まれるのに対し、「取り壊し」は破壊する行為そのものを指します。解体工事では、建物やその周辺環境、再利用可能な資材の分別など、さまざまな要素を考慮して進められます。そのため、「解体」という言葉のほうが、工事の全体像を的確に表していると言えます。
解体工事の流れと工法
解体工事の流れ
解体工事は、安全・効率的に進めるための計画と、建物や周辺環境に配慮した適切な工法選びが重要です。ここでは、解体工事の流れと工法について詳しく説明します。
1 事前調査
工事開始前に、解体対象の建物やその周辺環境について詳細な調査を行います。
- 建物の構造調査:木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造(RC造)など、構造により使用する工法が異なります。
- 周辺環境の確認:隣接する建物との距離、道路幅、電柱や配管の位置などを確認します。
- 有害物質の有無:アスベスト(石綿)やPCB(ポリ塩化ビフェニル)など有害物質の有無を調査し、適切な処理計画を立てます。
この調査結果をもとに、安全性や工法、費用の見積もりを具体化します。
2 施主様との打ち合わせ
施主様との話し合いでは、以下のような項目を確認・決定します。
- ライフラインの停止と手続き:電気・ガス・水道・インターネットなどを解約し、工事期間中に使用されない状態にします。これらは原則として施主様が手続きしますが、業者が代行することも可能です。
- 工事のスケジュール:工期や近隣への影響を考慮した作業時間を設定します。
- 残置物の処分:建物内部に残された不要な家具やゴミを撤去するかどうかを決定します。
- 必要書類の申請
3 解体工事には法的手続きが必要です。代表的な手続きは以下の通りです。
- 建設リサイクル法の届け出:床面積が一定以上の建物を解体する場合に義務付けられています。
- 道路使用許可申請:工事車両が道路を使用する場合、警察署で許可を取得します。
- 解体届の提出:自治体によっては事前に解体届を提出する必要があります。
4 近隣住民への挨拶回り
工事中に発生する騒音や振動について説明し、近隣住民への配慮を伝えます。直接挨拶に伺うだけでなく、工事内容や期間を記載した文書を配布する場合もあります。
5 養生設置
安全かつ周辺環境に配慮した養生を行います。
- 防音パネル:騒音対策として設置します。
- 防塵シート:粉塵が飛散しないように建物全体を覆います。
- 足場の組み立て:高所作業を安全に行うための足場を設置します。
6 解体作業
解体は建物の上部から順に進めるのが基本です。以下の手順で行われます。
- 瓦・屋根材の撤去:まずは屋根部分を解体します。瓦やスレート材は手作業で取り外します。
- 内装材の撤去:床材や壁材、天井材を取り外し、分別して処分します。
- 設備の撤去:エアコンや給湯器などの設備も取り外します。
- 重機による構造体の解体:建物の骨組みを重機で解体していきます。
建物の構造や周辺環境によって、手作業と重機の使用を使い分けることが重要です。
7 地中埋設物の確認と撤去
解体後の地面を整地する際、地下から埋設物(古い基礎や配管)が見つかる場合があります。この場合、施主様に報告してから撤去作業を行います。費用が追加になることが多いため、あらかじめ確認が必要です。
8 廃棄物の分別・搬出
解体時に発生する廃棄物を以下の種類ごとに分別します。
- 木材:リサイクル可能なものと不可のものに分ける。
- コンクリート:砕石として再利用する場合があります。
- 金属類:スクラップ業者に引き渡してリサイクルします。
- 廃プラスチック:焼却処分やリサイクル施設に送られます。
分別が不十分だと処分費用が増えるため、業者の丁寧な作業が求められます。
9 整地作業と清掃
解体後の土地を平らに整える作業です。土地を売却したり、新しい建物を建てる場合、整地がきちんと行われているかが重要になります。最後に工事現場や周辺道路を清掃し、工事を終了します。
解体工事の工法をさらに詳しく解説
1 手壊し工法
人の手作業で建物を解体する方法です。振動や騒音を抑えられるため、以下のような状況で使用されます。
- 道幅が狭く、重機を搬入できない現場
- 隣接する建物との間隔が非常に狭い現場
- 周囲に病院や学校などの静かな環境が求められる施設がある場合
デメリットは作業に時間がかかるため、コストが高くなる点です。
2 重機併用工法
最も一般的な工法です。重機で効率的に建物を解体しつつ、リサイクル可能な部分は手作業で分別します。
- メリット:作業が速く進み、費用を抑えやすい。
- デメリット:重機の騒音や振動が発生するため、周辺環境への影響が大きい。
3 圧搾機工法
鉄筋コンクリートやコンクリート構造物を解体する際に使用されます。油圧ショベルに取り付けたアタッチメント(圧砕機やクラッシャー)を使い、建材を破砕します。
- メリット:高い精度で解体でき、再利用資材を効率的に回収できる。
- デメリット:作業音が大きく、粉塵が発生しやすい。
4 カッター工法
コンクリートを切断する工法です。水を使用する湿式と、水を使わない乾式があります。
- 湿式:粉塵を抑えられるが、水の処理が必要。
- 乾式:水の使用が不要で作業が容易だが、粉塵が多く発生する。
5 ブレーカー工法
重機の先端に「チゼル」と呼ばれるノミ状の部品を取り付け、振動でコンクリートを破砕します。道路工事や基礎部分の解体でよく使用されます。
- メリット:頑丈な構造物を短時間で解体可能。
- デメリット:騒音と振動が非常に大きい。
解体工事は、一見単純そうに見えても、安全性や環境への配慮が求められる非常に繊細な作業です。建物の状況や周辺環境に応じた適切な工法を選ぶことが、効率的で安全な解体工事につながります。
施主様と業者がしっかりとコミュニケーションを取り、正しい手順と工法で進めることで、満足のいく解体工事を実現できます。信頼できる業者に依頼し、安心して工事をお任せください。
解体工事で使われる主な工法
現場の状況に応じて、以下の工法を使い分けます。
- 手壊し工法
手作業で慎重に解体を進める工法です。重機が使えない場所や、騒音を抑えたい場合に適しています。
- 重機併用工法
重機と手作業を組み合わせて解体を進めます。効率よく工事ができるため、多くの現場で採用される工法です。
- 圧搾機工法
油圧ショベルに専用アタッチメントを取り付け、コンクリートや鉄筋を切断・破砕します。
- カッター工法
コンクリートを切断する工法です。水を使う湿式と、使わない乾式があります。
- ブレーカー工法
重機の先端に振動するノミのような部品を取り付け、コンクリートを破砕します。
解体工事の注意点
近隣への配慮
解体工事は騒音や振動が発生しやすいため、近隣住民への事前挨拶や丁寧な対応が欠かせません。また、養生シートや防音パネルを活用して影響を最小限に抑える工夫が必要です。
法的手続きの遵守
建設リサイクル法や廃棄物処理法など、解体工事に関する法律を守り、必要な許可を適切に取得することが重要です。違反すると罰則が科される場合があります。
安全管理
工事現場での事故を防ぐため、安全対策を徹底します。重機の操作や足場の設置には、資格を持った専門家が対応します。
解体工事業者を選ぶポイント
解体工事を成功させるためには、信頼できる業者を選ぶことが重要です。業者選びの際には以下の点を確認してください。
- 実績:過去の工事実績を確認し、どのような工事を行ってきたかをチェックします。
- 許可と資格:解体工事に必要な許可や資格を保有しているかを確認します。
- 費用の透明性:見積もりが明確で、追加費用の発生条件についても説明があるかを確認します。
- 近隣対応力:住民への挨拶や工事中の配慮をしっかり行ってくれるかを確認します。