土地売却時の「地中埋設物」と「契約不適合責任」とは?解体工事の視点から解説
1. 地中埋設物とは何か?
「地中埋設物」とは、その名の通り、地中に埋められている物を指します。
具体的には以下のようなものが含まれます。
- 建物解体時に埋められたコンクリート片や屋根瓦(いわゆる「ガラ」)
- 古い水道管や下水管、浄化槽
- 井戸や地中タンク
- その他、不法投棄された廃棄物など
解体工事が現在ほど厳密に管理されていなかった時代には、建物を解体した際に出る廃材を処分せず、そのまま地中に埋め戻すことが珍しくありませんでした。特に戦後の復興期や高度成長期には、効率を優先するあまり適切に処理されなかったケースが多いとされています。
地中埋設物は表面からは確認できないため、買主にとっては「予期せぬ障害物」となる可能性があります。例えば、土地を購入後に新たな建物を建てる基礎工事を始めた際、思わぬ埋設物が発見されると、工事が遅れるだけでなく追加費用も発生してしまいます。
2. 地中埋設物が「契約不適合責任」に問われる場合とは?
瑕疵担保責任から契約不適合責任へ
2020年4月1日に施行された改正民法により、従来の「瑕疵担保責任」という制度は廃止され、「契約不適合責任」に移行しました。この変更により、売主の責任がより明確化され、範囲が広がっています。
従来の瑕疵担保責任では、「隠れた瑕疵(かし)」が対象でしたが、契約不適合責任では「契約の内容に適合していない状態」が問題となります。そのため、売主は契約書に記載された内容に合致しない場合、買主から責任を追及される可能性が高まります。
地中埋設物が契約不適合責任に該当するケース
以下のような場合、地中埋設物が契約不適合責任に問われる可能性があります。
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地中埋設物の存在を知りながら告げなかった場合
売主が埋設物の存在を把握していたにもかかわらず、その事実を買主に説明しなかった場合、契約内容に適合していないとみなされます。
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買主が土地を建築目的で購入し、その目的が達成できない場合
地中埋設物が基礎工事を妨げるなど、買主にとって重要な障害となった場合も契約不適合とされる可能性があります。
このような場合、買主は売主に対し、埋設物の撤去費用や損害賠償を請求することができます。
3. 地中埋設物を調査する方法
地中埋設物があるかどうかは、目に見えないため、事前の調査が重要です。調査方法にはいくつかの選択肢があります。
1. 机上調査
土地に以前建てられていた建物の図面や資料を確認します。
例えば、浄化槽が使われていた地域であれば、浄化槽が埋まっている可能性があります。また、ガソリンスタンドや工場があった土地では、タンクや廃材が埋まっているリスクが高いです。
2. 物理探査・非破壊調査
専門の調査会社に依頼し、地中レーダー探査や電磁波を利用した非破壊調査を行います。この方法は比較的精度が高く、埋設物の有無や大まかな位置を確認できます。
3. 実地調査(掘削調査)
より確実な方法として、ユンボ(油圧ショベル)を用いて実際に地中を掘る調査があります。ただし、個人の売主にとっては費用負担が大きく、一般的ではありません。
4. 地中埋設物でも問題にならないケースもある?
地中埋設物が必ずしも契約不適合に該当するわけではありません。以下のようなケースでは、買主に特段の不利益を与えないと判断されることもあります。
- 基礎杭や下水管が残っている場合
地中の基礎杭や下水管が建築計画に影響を与えない場合、契約不適合には該当しないことがあります。
ただし、これらの判断は慎重に行う必要があります。買主とのトラブルを避けるためにも、売主は埋設物の存在を正直に伝え、契約書にその対応方法を明記しておくことが重要です。
5. 解体工事業者としてのアドバイス
解体工事を行う専門家として、地中埋設物が見つかった場合の対応策をいくつかご紹介します。
1. 早期発見がカギ
解体工事を進める中で埋設物が見つかると、撤去作業が増え工期が延びることがあります。事前に調査を行うことで、トラブルを最小限に抑えましょう。
2. 適切な処理を実施
埋設物が産業廃棄物に該当する場合、法令に従い適切に処理することが求められます。不適切な処理は環境問題や法的責任につながるため、専門の業者に依頼するのが安心です。
3. 土地売却時の透明性を確保
売主として土地を売却する場合、埋設物の有無について正直に説明することが信頼関係を築く第一歩です。不動産仲介会社と連携し、買主に正確な情報を提供しましょう。
土地売却における地中埋設物の問題は、予想外のトラブルを引き起こすリスクがあります。特に解体工事を伴う場合、事前の調査や準備が不足していると、撤去費用やスケジュールの遅延が発生しかねません。
そのため、売主としては以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 土地の過去利用状況を調べ、埋設物の有無を把握する。
- 買主とのトラブルを避けるため、契約書に埋設物に関する対応を明記する。
- 信頼できる解体工事業者や不動産仲介会社を選び、専門的なアドバイスを受ける。