まずはじめに、「管理不全空き家」と「特定空き家」について解説します。
管理不全空き家とは?
2015年5月26日に施行された「空き家等対策特別措置法」では、放置され危険な状態である空き家を「特定空き家」として認定することになりました。
さらに2023年に空き家対策特別措置法が改正され、新たに「管理不全空き家」が認定されるようになりました。
管理不全空き家とは1年以上、誰も住んでいない状態の家で管理が不十分であり、今後もそのままの状態だと特定空き家に指定される恐れのある空き家を指します。
管理不全空き家は特定空き家に指定される前段階の状態です。
管理不全空き家に指定される要因
管理不全空き家に指定される要因としては以下の4点が挙げられます。
- 安全性が疑われる状態
- 環境や衛生に悪影響を及ぼしている状態
- 地域のコミュニティや不動産価格に悪影響とみなされる状態
- 犯罪数が増加する可能性
倒壊の危険性がある家や、不法投棄でゴミだらけの家など近隣住民だけではなく、地域全体に悪影響を及ぼしてしまいます。
このような家を管理不全空き家に指定することで、行政を介入しやすくして早期改善を図る目的です。
特定空き家とは?
2015年5月26日に施行された「空き家等対策特別措置法」では、以下のような状態にある空き家が「特定空き家」に該当するとされています。
具体例:柱や梁が腐食している、屋根に穴が開いている、シロアリ被害が著しいなど
具体例:ゴミや動物の死骸などが放置され、悪臭や害虫の発生があるなど
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
具体例:壁や屋根が破損している、草木がぼうぼうに生えている、落書きがあるなど
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
具体例:不法投棄の場所になっている、犯罪者の隠れ家になっている、動物の鳴き声や糞尿で悪臭がしているなど
これらの状態にある空き家は、地域住民の生活環境を悪化させ、安全面でも大きな問題となる可能性があります。
管理不全空き家と特定空き家に課される罰則
では、それぞれの空き家に課される罰則について詳しく見ていきましょう。
1. 指導
- 対象: 管理不全空き家、特定空き家
- 内容: 行政から、空き家の管理に関する指導を受ける
- 特徴: 罰金などのペナルティはない。この段階で改善すれば、以降の罰則を受けることはない。
植木が伸び放題だったり、窓ガラスが割れたままだったりするなど、明らかに管理が行き届いていない状態の場合、行政から指導が入ることがあります。
2. 勧告
- 対象: 特定空き家
- 内容: 行政から、空き家の改善を勧告される
- 特徴: 固定資産税の宅地並み課税の適用除外。つまり、固定資産税が大幅に上がる。
指導に従わず、空き家の状態が改善されない場合、次の段階として勧告を受けることになります。
勧告を受けても改善しない場合、固定資産税が大幅に上がってしまうため、経済的な負担が大きくなります。
固定資産税については記事の後半で解説します。
3. 命令
- 対象: 特定空き家
- 内容: 行政から、空き家の改善を命令される
- 特徴: 命令に従わない場合、50万円以下の過料が科せられる。
勧告を受けても改善が見られない場合、最後に命令を受けることになります。
命令を無視すると、過料という罰金が科せられてしまいます。
4. 行政代執行
- 対象: 特定空き家
- 内容: 行政が所有者に代わって、空き家の解体などの措置を行う
- 特徴: 解体費用は所有者の負担となる。
それでも改善が見られない場合は、行政が所有者に代わって空き家を解体するなどの措置を取ります。
この場合、解体費用は全額所有者の負担となります。
特定空き家の固定資産税は?
通常の家屋が建つ土地は住宅用地の特例措置の対象とされ、土地にかかる固定資産税が安くなっています。
(住宅用地の特例:住宅が建つ土地にかかる固定資産税が6分の1や3分の1などに減額される特例)
しかし、特定空家に指定された後に、自治体から改善の「勧告」を受けると、住宅用地の特例措置の対象から除外され、固定資産税の優遇措置が適用されなくなる関係から、固定資産税が多くかかります。
特定空家に指定され、自治体から「勧告」を受けた場合の固定資産税額
住宅用地の特例措置が適用される場合と、されない場合とでは、以下のように固定資産税額が変わってきます。
例)空き家の敷地面積が200㎡以下、課税標準額が【建物】500万円【土地】2000万円だった場合
■住宅用地の特例措置が適用される場合(通常の土地、建物にかかる固定資産税額)
【建物】500万×1.4%(税率) = 7万円
【土地】2000万×1/6(住宅用地の特例措置による減額)×1.4%(税率) = 4.7万円
合計 11.7万円
■住宅用地の特例措置が適用されない場合(自治体から「勧告」を受けた特定空家にかかる固定資産税額)
【建物】500万×1.4%(税率) = 7万円
【土地】2000万×1.4%(税率) = 28万
合計 35万円
上記の場合、自治体から「勧告」を受けた特定空家にかかる固定資産税額は、通常よりも年間23.3万円高額になることが分かります。
さらに、自治体からの「命令」に応じずに違反となった場合、最大50万円以下の過料が科せられてしまいます。