ご近所で解体工事が行われたことがあると、あの騒音が気になったという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。解体工事の音は日常の静けさを壊してしまうことがあり、近隣住民にとってストレスとなりがちです。しかし実は、解体工事の騒音には厳しい規制があることをご存じでしょうか?
本記事では、解体工事の騒音に関する法律や基準、現場で行われている騒音対策、さらに住民としてできる対応について詳しく解説します。解体工事の騒音に悩まされたことがある方、またはこれから近所で解体工事が始まる予定がある方は、ぜひ最後までお読みくださいね。
解体工事の騒音対策とは?騒音規制基準や防音シートの役割を徹底解説!
解体工事の騒音規制とは?
解体工事で発生する音については、「騒音規制法」と「振動規制法」という法律で規制されています。これらの法律の目的は、近隣住民の生活環境を守り、不要な騒音や振動を防ぐことです。では、それぞれの法律について簡単に見ていきましょう。
騒音規制法とは?
騒音規制法は、工事現場や工場、自動車の騒音など、社会生活に支障をきたす騒音の許容範囲を定めた法律です。建設現場もこの対象に含まれ、解体工事においても守るべき基準が明確にされています。
振動規制法とは?
振動規制法は、解体工事をはじめとする建設現場で発生する振動の許容範囲を定めた法律です。特に大型重機を使用する解体現場では、振動による地盤の揺れが近隣住宅に影響を与える可能性があるため、この法律も重要です。
どちらの法律も、「音や振動を完全にゼロにする」のではなく、「一定の範囲内に収める」ことを目的としています。そのため、法律の基準内であれば音や振動が発生すること自体は許容されているのです。
解体工事の騒音基準
解体工事の騒音基準は、地域や状況によって異なりますが、一般的な住宅街では以下の基準が設定されています。
- 騒音規制法:85デシベル
- 振動規制法:75デシベル
85デシベルとはどのくらい?
「85デシベル」と言われても、具体的にどのくらいの音なのかイメージしにくいですよね。以下に、生活の中での音と比較してみました。
音の発生内容 |
デシベル |
備考 |
ジェット機の離陸時 |
130 |
長時間聞くと耳に損傷を与えるレベル |
カラオケ |
100 |
大声で話さないと話ができない |
地下鉄の車内 |
80 |
やや大きな声で話さないと聞き取りにくい |
目覚まし時計 |
60 |
普通の声で話ができる |
静かなオフィス |
40 |
小声でも話ができる |
深夜の住宅街 |
30 |
かなり静かな環境 |
85デシベルは「地下鉄の車内よりもやや大きい」程度の音です。この音が常に発生していると、生活に支障をきたすことも考えられるでしょう。解体業者は、この基準を超えないように細心の注意を払っています。
解体工事が許可されている曜日と時間
解体工事には、音や振動だけでなく作業時間にも規制があります。以下のような曜日や時間に作業を行うことは法律で禁止されています。
- 日曜日と国民の祝日
- 夜19時~朝7時の間
- 1日10時間以上の作業
- 連続して6日を超える作業
これらの条件を守らずに作業を行っている場合は違法行為にあたります。その場合、近隣住民として改善を求めることができます。ただし、これらの条件を守っている場合には、法律違反ではないため直接的な改善要求は難しいかもしれません。
解体工事の騒音対策
解体工事現場では、近隣住民への配慮としてさまざまな騒音対策が行われています。ここでは代表的な対策を見ていきましょう。
1. 防音シートの設置
解体工事では、作業中の音をできるだけ抑えるために防音シートが使用されます。防音シートは、特殊な素材でできており、音を遮断する効果があります。
ただし、防音シートは風を通さないため、強風地域では安全性の観点からメッシュシートが使用されることもあります。メッシュシートは網目状の素材でできており、風を通すため安全性は高いですが、防音効果は劣ります。そのため、状況に応じて使い分けがされています。
2. 騒音計の設置
現場では、騒音の度合いを常時監視するために騒音計が設置されます。騒音計を使うことで、85デシベルを超えていないかリアルタイムで確認でき、基準を超えた場合には即座に対応が取られます。
騒音がひどい場合の対処法
解体工事現場から発生する音があまりにもひどい場合、どうすればよいのでしょうか。具体的な対応方法を解説します。
1. 施主に相談する
最初の相談先としては、解体工事を発注した施主がおすすめです。施主は解体業者にとって「お客様」であるため、施主から業者に改善を求める方が効果的です。
2. 解体業者に直接相談する
施主に相談しても改善が見られない場合は、直接解体業者に相談する方法もあります。ただし、解体業者に相談する際は、騒音や振動がどれほどの被害を与えているかを証明できるデータを用意しておくとスムーズです。
3. 自治体に相談する
解体業者との話し合いでも解決しない場合は、自治体に相談することも可能です。自治体は住民の生活を守る役割を持っており、必要に応じて指導や改善要請を行ってくれます。
よくある質問:防音シートを低くする理由
解体工事が進むと、防音シートがだんだん低くなっていくことがあります。「どうして防音シートを低くするの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
これは、強風による足場の倒壊を防ぐためです。防音シートは風を通さないため、高い場所に設置したままでは風の影響を強く受け、足場が倒壊する危険性があります。建物の解体が進むにつれて防音シートを低くすることで、風によるリスクを軽減しているのです。